『傲慢な援助』
“貧困には2つの悲劇がある。 1つは、貧困という事実。 そしてもう1つは、貧困を救うだけの力と資金があるのに、それを本当に必要としている人の手には全く届いていない、という事実だ。”
こんな衝撃的なメッセージから、この『傲慢な援助』という本は始まる。
そして、特に重要だとする後者について、トップダウン型の「プランナー(Planners)」とボトムアップ型の「サーチャー(Searchers)」という二種類の人々を設定し、どうすれば貧困を解決できるかを議論している。
その一つの例として、インドにおける経済的成功を挙げている。
「私たちのおかげだ!」と世界が声を上げたその大成功において、世界銀行(筆者がプランナーの代表として掲げている)の対インド新規融資額は、年間17.5億ドル、インド人1人当たりに換算すると一日たった0.5セントに過ぎなかった。 その一方、デリーの2人の起業家(筆者の言うところのサーチャー)、ラジェンドラ・ポーウィールとヴィジェイ・タダニが、1980年初めに始めたコンピュータ学校であるNIIT(National Institute of Information Technology)は、数多の人々に技術と知識を与え、時価総額は現在20億ドルにも及んでいる。
訳者の後書きにもある通り、かなり偏った考えであることは事実であろう。しかし、インドを始めとした様々な具体的事例から帰納された筆者の見解は、一読の価値があるはず。 |