【WYPなう】20ヶ国の共同体で、“共に生きる”を学ぶ(3) 栃木から広島へ。「Peace Culture Village」の挑戦

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世界各地でこれからの生き方、働き方を模索しているWYP編集メンバー4人。
【WYPなう】は、それぞれの「今」についてメンバー同士インタビューをする企画です。

今回は、IT企業を退職したのち、2015年4月から2016年3月までアジア学院(※1)でボランティアとして働いていた近藤のインタビュー。一日の過ごし方、アジア学院を選んだ理由に続き、「アジア学院で得たもの」「これからどんな生き方をしていきたいのか?」を掘り下げます。

※1)栃木県那須塩原にある、農村地域の指導者・リーダーを養成する学校。アジアやアフリカなどの諸外国を中心に学生を受け入れており、2015年度は19ヶ国から30名弱の学生が学んだ。

▼前回の記事はこちら▼
20ヶ国の共同体で、“共に生きる”を学ぶ(1) アジア学院の一日
20ヶ国の共同体で、“共に生きる”を学ぶ(2)「惹かれる何か」に従って生きる

 

どんなことでも「あ、意外とできるな」と思えるようになった

– アジア学院で1年間を過ごして、どんなところが変わりましたか?

大きく進歩したのは、英語力と農業関係の知識や経験です。

英語は、以前は「まあ、たぶん……」程度だったのが、ようやく「話せると思います」くらいには言えるようになりました。アジア学院は海外からの学生がほとんどなので、日常的に英語を使う環境のおかげで上達しました。それに加えて通訳の手伝いをしたり、モーニングギャザリング(※2)のときに原稿を見ないで話す練習をしたりと、日々の生活の中で小さな自信を積み重ねていきました。

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それに、英語と言っても本当に人によって違うんだということを感じました。アフリカ人やアジア人はもちろん違うし、アメリカ人がイギリス人の英語がわからないと言っていたり。なので、英語は大事だけれども、誰かに何かを伝えたいという気持ちや必然性、それと言葉以外も含めた手段でいかにコミュニケーションをするかが大事だなと感じました。

(※2)アジア学院で行われる朝の集い。自分の内面をシェアする貴重な時間。詳細は1回目の記事をご覧ください。

 

– 農業関連についてはどうですか?

働き始めたばかりの頃に、「カレーをつくるから、畑からニラ取ってきて!」と言われて、そもそもどれがニラで、かつどうやって取ればいいのかわからなくて困ったことがあったんです(笑)

こんな匂いだったけど、本当にこれでいいのかな。根本から抜いていいのか、どこかで千切った方がいいのか、など。畑に植わっている生のニラを見たことがなかったんです。あとは、稲を植えてからお米を収穫するまでのサイクルを知らなかったり。本当に何も知りませんでした。アジア学院で1年を過ごして、作物の種類、育て方、季節性など大まかな感覚をつかむことができました。

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それから、廃材を使って何かを作る機会もあったので、0からモノをつくることへの抵抗がなくなりました。どんなものでも誰かがつくっているわけだし、「構造をきちんと考えれば自分でもできるんじゃないかな」と思えるようになったのは、大きな変化だと思います。

 

「祈り」は気持ちを一つに合わせること - 宗教観との向き合い方 –

– アジア学院の理念や行動指針はキリスト教がベースになっていると聞きましたが、キリスト教の考え方から得たものはありますか?

僕はキリスト教徒ではないですし、今まで強い信仰心を持った人と一緒に生活をしたことがありませんでした。だから、とても新鮮でしたし、いろいろな物の見方が変わったと思います。

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特にいいなと思ったのは、アジア学院の校長先生が教えてくれた「祈り」に対する考え方でした。「祈る」というと「神様、どうか助けてください」というイメージを持っていたのですが、そうではない、と。普段はみんなそれぞれの生活や仕事があってどうしてもバラバラになってしまうから、その祈りの瞬間にみんなの気持ちを一つに合わせることで、みんなでこういう方向に進んでいこう、こういうことを願おう、とか。

国籍も年齢も文化も、何もかもバラバラなアジア学院がこうして成り立っているのは、こういう一体感があるからなのかな、と感じました。

 

アジア学院を出て広島へ。「Peace Culture Village」の挑戦

-アジア学院のボランティアは3月までだったとのことですが、そのあとは何をしているんですか?

2016年4月から広島県に住んでいます。アジア学院で出会ったスティーブン・リーパーという人との縁なのですが、彼と一緒に「Peace Culture Village」という場所をつくっているところです。

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今まさに私たちが生きている世界は、外にある土地、資源、食糧、人、さまざまなものを力で奪い取って成り立っているものです。これは人類史上続いてきた一つの文化です。それと対局にある価値観を「平和文化」と呼んで、その考え方を実践し伝えていく場所をつくろうとしています。具体的には、食べ物やエネルギーを持続的に循環させる自給自足的な生活をすること、身近なコミュニティでシェアをしながら経済をまわすこと、を目指しています。

ここに来てから7ヵ月が経ち、家の整理やリフォームをしたり、畑を始めたり、環境を整える準備をずっとしてきました。現在はスティーブも含めた5人で法人化を進めているところです。

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– いわゆる「東京的な価値観」の真逆ですね。都会の生き方に対してはどんなスタンスなんですか?

どちらが正しい、間違っているということではないと思っています。僕も、スカイプやメールを使って遠隔で仕事をしたりと、進歩のいいところを享受しているので、「東京的なもの」が間違っているとは思いません。ただ、格差、貧困や環境問題など、今の民主主義・資本主義社会に組み込まれている課題は確実にあると思っていて、それに置き換わる、もしくは補うようなものをつくりたいと思っています。

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同じように疑問を持っている人、何かを探し求めている人たちにとって、今の僕たちの生き方が、本質的な価値を見直すきっかけになればいいなと思います。

– これからの目標は?

直近では法人をきちんと立ち上げて、実際に事業として始めていきたいですね。今は、価値観やビジョンはあるけれど、具体性がまだまだ伴っていない状態なので。自分たちが目指しているものを一つずつ形にしていきたいです。