インドの電力不足

 インドの電力不足は有名である。電力不足がインドの経済成長における一番のボトルネックとなっていると言われているほどだ。

しかし電力不足による停電多発に困っている、どころか、「電気がまったく使えない」人々がインドには数多くいる。

世界中で16億人が送電網の恩恵を受けていないと言われているが、12億人いるインド国民のうち半分は電気が使えない状況にある。都市部の電力不足も深刻だが、無電化村の人々はまったく電気が使えないことで電気機器が使用できない、夜間勉強・仕事ができない、など経済活動に制限が生じてしまっているのである。

そんな人々は、高価で質の低いエネルギー源(灯油やろうそく、カーバッテリーなど)を使用せざるを得ない。

電力格差が経済格差をさらに深刻化させているのである。

 

『世界を変えるデザイン』で紹介されているSELCO indiaのソーラー家庭照明システムはそんな電力格差に対して希望を感じる成果をあげている。

 1995年創業の同社は、主にインドの無電化村が多くある地方部をターゲットに、送電網が不要の家庭用ソーラー照明システムの販売・提供を手掛けている。

 既に11万5千世帯にソーラーシステムを供給してきた同社のビジネスシステムの優れている点は、単にソーラーシステムの販売だけに終始するのではなく、貧困層でも購入・返済できるようその支援まで行っている点だ。

まず購入にあたっては、グラミン銀行と協力して革新的消費者ローンプロジェクトを開始し、購入資金準備を支援。また、レンタル方式も採用することで貧困層の購入へのハードルをさらに低くしたのだ。

返済面でも、地元企業と連携し就職支援することで返済のための収入確保まで支援している。インド全土に25拠点サービスセンターをもつ同社は、システムのメンテナンスに地元労働力を活用することでも雇用創出に貢献している。

 

インドという国自体の電力不足解決には、大規模発電所や変電所、送電網の拡充が必要で、現在インド政府が電力不足解消のため大規模投資を進めているが、それ上回るペースでの電力需要拡大・発電設備拡充への様々な問題により、電力設備建設が追いついていない状況だ(現状では電力需要に対し供給が、年間発電量で約10%足りない)。

そんな状況なので、無電化村の電力問題解決には前述のSELCOのような企業が今後さらに大きな役割を担っていくことは無違いないだろう。

@sssyoshi