『ガンディーからの〈問い〉』 ~君は「欲望」を捨てられるか~

今回のエントリーは、『ガンディーからの〈問い〉』という本の書評です。「ガンディー」という名前、皆さん一度は聞いたことがあると思います。しかし、もう少し詳しく聞いてみると、「インドの独立に貢献した人」だったり、あるいはもう一段具体的に「塩の行進の人」、「断食の人」や「非暴力・不服従の人」といった、これまたざっくりとしたイメージをお持ちの方々も多いのではないでしょうか。しかし、現代インドの建国に大きく寄与したこの人を押さえること無しに、現代インドを語ることはできません。そんな大切な基本中の基本でありながら誰もがつい知ったフリをしてしまう彼の人生と偉業について、要所を押さえてあるのが今回ご紹介する『ガンディーからの〈問い〉』なのです。

この本の魅力は以下の2つに大きく分けられます。

まず1つ目は、「塩の行進」、「断食」、「非暴力・不服従」などのガンディーの代表的なキーワードを、「具体的には何をしていたのか」から「その本質的な意味」まで、丁寧に説明してくれています。また同時に、ガンディーの禁欲主義とその矛盾について等、生身の人間としての彼にも触れることができます。

そして2つ目は、終章に載っている、現代日本を代表する禅僧である南直哉氏との対談。ガンディー、宗教、欲望などの、それまでの章で取り上げられてきたテーマについて、お二人の異なったバックグラウンドを活かした様々な角度からの意見が会話形式で書かれています。それが私たちの本書に対する理解をより一層深めてくれます。

ここで、本書の抜粋を入れながら、それぞれについてもう少しだけ詳しくお伝えします。

前者については、有名は「塩の行進」から。

独立、独立と口で言うのは簡単ですが、では、植民支配のどこに真の問題があって、独立を勝ち取る意義がどこにあるのかなどということは、民衆はなかなか簡単には理解できません。だから、「塩」だったのです。

塩というのは、それがなければ生きられない、生存不可欠なものです。しかも、天からの恵みであり、誰の所有物でもありません。にもかかわらず、インドの人たちはそれをイギリス人に占領されて、高いお金を払って買わされていたのです。とてもおかしいことです。政治家の言う小難しい理屈はわからなくても、これなら、文字の読み書きができない人もわかります。すなわち、「塩を自分たちの手で作る」というのは、植民支配の不条理さを民衆に訴えるための、非常にわかりやすい「シンボル」であったわけです。

後者に関しては、例えば「断食とハンストはどう違う?」というテーマの中での記述を。

違いは、何らかの政治的な要求をともなうか、ともなわないかということ。そして、宗教的な色彩をまとうか、まとわないかということ。あとはだいたい同じです。

「断食」というのはたしかに宗教行為の一種ではあるのですが、仏教においては、さほど価値を認めていないんですね。ブッダが修行の過程で一通りやってみて、やめたのものの一つですよ。

 

いかがでしたでしょうか。もう少し知りたい!と思ってきた方は是非とも本書をチェックしてみて下さい。

最後に、本書からの引用を添えて終わりにします。序章に書かれていながらも、本書を読み終えガンディーの人となりをよく理解した時にこそ、その意味が分かる、ガンディーが晩年に残したという印象的な言葉です。

 

My life is my message.

 

 

@ryoichick